みなさん、こんにちは!会長のMashaです。 窓の下でギターを奏でながら愛を歌う――そんなロマンチックな光景を想像したことはありますか? 今日ご紹介するのは、まさにそんな誰もが一度は憧れるシチュエーションを描いた珠玉のロマンス、『Милая(愛しい人よ)』です。
まずは、初夏の夜の匂いが漂ってくるような、まっすぐで素朴な歌詞の世界を覗いてみましょう。
【ざっくり曲紹介】
「愛しい人よ、聞いておくれ。僕はギターを手に、君の窓の下に立っているよ」
静かな夜、ナイチンゲールが歌い、あたり一面にはバラの素晴らしい香りが漂っている。
「ただ一度でいいから僕を見ておくれ、五月の太陽よりも明るい、君の瞳の輝きを!」
やがて2人は夜の街へと連れ立ち、紺碧の水面に映る美しい月明かりの下を歩いていく……。
これぞロマンス!という直球のラブソングですね。現代における最高峰のロシア・ロマンスの歌い手、オレグ・ポグージンさんの水晶のような歌唱で聴くと、思わずため息が出てしまいます。 しかし、この美しい曲のルーツを辿ると、意外すぎる「国境を越えた大ヒットの歴史」が隠されていたのです。
歌詞紹介
歌い継がれてきた名曲なので、歌詞は何パターンかあります。そして引用元は上記の動画と歌詞が微妙に違う。。。ごめんなさい。。。
【ロシア語歌詞】
☆Милая, ты услышь меня,
Под окном стою
Я с гитарою!
【☆繰り返し】
★Так взгляни ж на меня
Хоть один только раз
Ярче майского дня
Чудный блеск твоих глаз!
【★繰り返し】
===
☆Милая, ты услышь меня,
Под окном стою
Я с гитарою!
Ночь тиха была,
Соловьи поют.
Чудный запах роз
Всюду носится...
Мы гуляем с тобой,
Луна светит на нас
И в лазурной
Воде отражается!
【日本語歌詞】
☆愛しい人よ、聞いておくれ
窓の下に立っているよ
ギターを手に!
【☆繰り返し】
★だから僕を見ておくれ
ただ一度でいいから
五月の陽よりも明るい
君の瞳の素晴らしい輝きを!
【★繰り返し】
===
☆愛しい人よ、聞いておくれ
窓の下に立っているよ
ギターを手に!
夜は静かで
ナイチンゲールが歌っている
バラの素晴らしい香りが
あたり一面に漂う…
僕たちは一緒に歩く
月が僕たちを照らし
そして紺碧の
水面に映っている!
🇫🇷 始まりはフランスの「ワルツの王様」だった!?

おいおいMasha、ちょっと待て。『ロシア・ロマンス博物館』とか言っておきながら、この曲のメロディを作ったのはガチガチのフランス人じゃねえか! 優良な国内産業(ロシア音楽)を保護せず、フランスからの輸入に頼るとは、貿易収支の観点から見ても容認できんぞ!

お黙りなさい。経済学の数式を芸術に持ち込まないでくださる?
そう、この美しいメロディの生みの親は、エミール・ワルトトイフェル様。オーケストラ界で『フランスのヨハン・シュトラウス』と称えられた、気高きワルツの王様ですわ。彼が1880年に作曲した不朽の名作ワルツ『ドロレス』こそが、この曲の正体ですのよ


ふん、パリのブルジョワジーどもが夜な夜なドレスを着て踊り明かしていた退廃的なワルツ(ドロレス)か。それがどうして、ギターを片手に窓辺で愛を乞う泥臭いロシア・ロマンスに化けたんだ?
🇺🇦 ウクライナの天才詩人が仕掛けた「著作権無視(?)の名翻訳」
このフランスで大ヒットしたワルツ『ドロレス』の美しさは、ヨーロッパの国境を越え、帝政ロシアのウクライナに住むセルゲイ・ゲルデルという男の耳に届きます。このゲルデルさん、実はあの超有名ロマンス『黒い瞳』を生み出したことでも知られる、稀代のヒットメーカー。

このメロディをひどく気に入った彼は、フランス語の優雅なワルツの拍子をそのままに、とっさにロシア語の詩をのせてしまいました。それが「愛しい人よ、僕のギターの音を聞いておくれ」という、あのまっすぐで心を震わせる窓辺のラブソングだったのです。
🎧 ロシア歌曲の女王からジプシーまで!豪華絢爛の聴き比べ
時代を超えてロシア人のDNAに刻まれたこの曲、ソ連時代から現代に至るまで、信じられないほど豪華なスターたちが歌い継いでいます。Masha一押しのラインナップがこちら!
- ゲオルギ・ヴィノグラードフ
1930年代のソ連を代表するテノール歌手。『カチューシャ』の歌手としても有名です。彼の驚くほど透き通ったハイテノールの歌声で聴くと、ソ連時代なのにまるで19世紀の高級サロンにタイムスリップしたような気品を感じます。
- ジプシー合唱団(映画『首にかかったアンナ』より)
チェーホフの原作を映画化した名作の一シーン。帝政期の貴族たちが華やかな舟遊びに興じる中、和気あいあいとこの曲が奏でられます。

観てください、この絢爛豪華なドレス! これぞ我が理想のロシア帝国ですわ!

うぐっ、これぞ映画に描かれたブルジョワジーの頽廃……しかし、みんなで合唱してるシーンが妙に楽しそうで混ざりたいのは内緒だ……
- ニコライ・スリチェンコ
ソ連で唯一「人民芸術家」の称号を得た高名なロマ(ジプシー)の歌手。胸を掻きむしるような情熱と圧倒的な表現力で歌い上げる姿は、まさに歌詞の主人公そのもの。聴くだけで魂が震えます!
- リュドミラ・ズィキナ 「ロシア歌曲の女王」の異名を持つ伝説の歌姫。彼女の水晶のように澄んだ、どこまでも深く広がる歌声は、初夏の夜のバラの香りと紺碧の水面を完璧に目の前に描き出してくれます。

